ルーマニアのティミショアラでの滞在がとてもよかったので、ルーマニアについてもうちょっと知りたいと思ってネットで調べていたら、ブカレストのストリートチルドレンのビデオがたくさん出てきました。

聞いたことはあったのですが、ドキュメンタリーの内容が私には衝撃が強過ぎて2,3日頭から離れず気分が落ちてしまいました。

私が最初から最後まで見たビデオは2001年のドキュメンタリーで、正式には「Children Underground」チルドレン・アンダーグラウンドといってアメリカ人のイディッ・ベルツバーグさんが製作したものです。

あれからルーマニア政府は少なくとも対策をとってきたのであそこまでひどくないようですが、ネットで関係するブログや記事では、まだまだストリートチルドレンは存在しているし、ビデオに出ていた何人かは今もビクトリア駅付近で見かけられているようです。(2017年現在)

ビデオの中でエディッツ・ベルズバーグは5人のチルドレンに焦点を当てて、記録を続けていきます。

・男として振る舞うクリスティーナ16歳
・エタノール中毒のマカレナ14歳
・父親の虐待があって家に戻りたくないミハイ12歳
・電気の通っていない家から家出したアナ10歳
・アナに連れ出されて家出した弟のマリアン8歳

クリスティーナ
クリスティーナは本当の名前をエレナ(Elena)といい、生まれてすぐに施設に預けらました。施設での生活はいじめや暴力が絶えず、彼女が言うには頭に釘を打ち込まれた(打ち込まれそうになった)のがきっかけで施設を脱走、身を守るために男として生きる決意をします。彼女はビクトリア駅付近の子供達をまとめるチームリーダー。

マカレナ
食べ物よりもエタノールを吸う事を優先するマカレナ。クリスティーナは彼女を守るために彼女にも男のように振る舞うように助言したという、なので一見すると彼女も男の子のように見えます。彼女は自分の本当の名前を知らず、また誕生日も両親のことも知らないという。しかしビデオの終わりで彼女は彼女の両親は別の国いて、また彼女は実は双子で妹は学校に行って元気に暮らしていると告白します。個人的に彼女の肌の浅黒さから、中近東のバックグラウンドがあるのではないかと思えました。

彼女がマカレナと呼ばれるようになったのは一時期流行った彼女のお気に入りの歌で、彼女がいつも踊ってばかりいたので周りのみんながそう呼び始めたのがきっかだといいます。おとなしく従順な性格だけど、お腹が空いたり、拒絶や無視されたりするとパニックになり泣きわめいたりします。

シルバーのペイントを袋に入れて吸引している場面から始まり、駅の入り口付近でうつろになってハイになっている状態は中毒者そのものに映ります。と思えばたまに訪れる社会福祉施設でシャワーを浴びきれいにこざっぱりとした後、食事をする場面では穏やかな優しい笑顔を見せます。

ネット上では彼女のことに対して多くのコメントが載せられており、今でも彼女の居場所について多くの情報が飛び交っています。グーグルで彼女の名前をドキュメンタリーの名前と一緒に検索すると、髪の長い彼女らしき女性が一枚だけ出てきます。

ミハイ
12歳のミハイは両親ともアルコール中毒で、父親の虐待に耐えられず家出、しかし5人の中では唯一家出したことに罪悪感を示す言葉を発しています。

自分から物乞いなどはせず、どうにかストリート抜け出そうと福祉施設のケアを受けるために行動を起こすけれど、両親から身分証明書がもらえずストリート生活を余儀なくされます。

温和な話しぶりで、身に付けたいスキルや将来への希望を語り、他の子とは違い(8歳のマリアンを除く)ストリート生活を自由だとは思っていないこが覗えます。

ある日、噴水のある公園へ向かうはずが別の場所へとたどり着き、それをアナにヒステリックに責められて石で自分の腕を切りつけます。アナは泣きやみそれをただ眺めています。

アナ
ドキュメンタリーの製作者エディツ・ベルズバーグは最初に病院でアナに会い、その場でアナのことをドキュメントする事を決めたといいます。アナは警察から棍棒で殴られて折れた足の骨のギブスを取り外しているところでした。

彼女は家でのことはほとんど語らず、洋服もなく電気も通っていない家で、両親のことを愛してるけど自分と弟がストリートで暮らす方がお互いのためにいい思っているといいます。

義理の父親に2回、家へと連れ戻され、でも二度とも逃げ出し、それとはまた別の機会に家に戻り弟を連れ出します。

製作者のベルズバーグとソーシャルワーカーと共に再度家を訪れた時、家に留まりたいか、ストリートに戻りたいかと聞かれて、結局ストリートに戻ります。(個人的にはアナがどっちにも決められずにいるように見えます、また母親がアナの”うん”を聞いて安堵しているようにも見えました。。)

家へ向かう途中、電車の中から見える景色に楽しそうにしていて、ある建物をみて”あれがお父さんの働いていた工場だよっ”と嬉しそうに言っていたりします。

マリアン
8歳のマリアンは姉のアナに連れ出されて、ビクトリア駅にやってきました。でもストリートの生活は本当は嫌でいつも姉のアナのそばにくっついています。昼間は地上の公園で眠り、夜は駅地下でダンボールを敷いて寝ていたりと、眠っているシーンが多いです。

ベルズバーグが8才のマリアンに対してインタビューしている場面は見られず、ソーシャルワーカーと家へ戻った時は母親へ抱きつく様子があり特に親子関係に問題があるようには見えませんでした。

アナとマリアンの本当の父親や、両親が別れた理由などははっきりとは語られていません。アナの母親は9人兄妹で彼女自身、施設で育ったという。長い間仕事が見つからず、”チャウシェスクの独裁政権下の頃は仕事に不安を覚えることはなかった、政権が変わった途端仕事を首になった”と告白している場面は印象深いものでした。

ドキュメンタリーはサンダンス映画祭で審査員賞を受賞、オスカー賞のドキュメンタリー映画部門にノミネートされました。

サンダンス映画祭は独自映画を対象として毎年一回アメリカ、ユタ州で行われています。
俳優で映画監督でもあるロバート・レッドフォードが主催しているもの。

このドキュメンタリーはありのままの現実を描写して人々にストリートチルドレンへの認識を高めたことにとても評価されていますが、批判も多いのも事実。

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